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時代小説の世界へ、ようこそ

2011-08-05-1.jpg好きな作家がたくさんいるのは、幸せなことです。
村上春樹、太宰治、宮沢賢治、坂口安吾、宮部みゆき...最近は、それに山本周五郎が加わりました。

きっかけは、畠中恵の「しゃばけ」でした。
数年前までは、時代小説というジャンルにはまったく興味がなく、「そんなの面白くないに決まっている」とまで思っていたのに、わからないものですね。

新しい世界への扉を開いてくれた「しゃばけ」は、江戸捕物帳(江戸を舞台にした、探偵推理小説)というジャンルの時代小説です。
その後、捕物帳以外にも、時代小説作品はたくさんあることもわかっても、さぁ、どこから手をつけてよいものやら??
あまりに多すぎて、何が面白いのかサッパリわかりません。。

そんな中、畠中氏のエッセイに「宮部みゆきの作品が好き」というようなくだりがあったので、まずは宮部氏の時代小説作品を網羅。
宮部氏は現代物、時代物(捕物も、捕物以外も)の両方を書いていますが、
時代物は数がそんなにはないので、すぐに読み終わってしまいました。
その後、現代物も読んでいたら、その中に
”主人公が電車の網棚の上に山本周五郎の「赤髭診療譚」を見つける”という話があって、
ためしにこの「赤髭診療譚」 を読んでみたら、とても良かったのです。
以来、ファンになりました。


山本周五郎は、直木賞をはじめ色々な賞を辞退したという、ちょっとこだわりのある作家です。
彼も時代物と現代物の両方を書いていますが、9割は捕物帳以外の時代物。
そして、私は時代物の方が圧倒的に好きです。
山本氏の時代物には、庶民の生活を描いた市井もの、長屋もの、武士や浪人の生活を描いた武家もの、
古典落語のような滑稽ものなど、いくつかのジャンルがあって、
(滑稽ものは、太宰治に通じるところがあるな〜と思っていたら、ご本人は太宰がお好きだったらしいです)
どれも面白いだけでなく、読み終わってから人生を考えてしまうような...そんな影響力があります。

とにかく、登場人物の心情描写がとても丁寧です。
共通するのは「まっすぐで情熱的な志」というのかな...
まじめで一生懸命に生きているからこそ、ふとしたきっかけで、それが負に転じてしまうこともある。
そこであがいてもあがいても、どうにもならないところまで追いつめられて...
そんな主人公にハラハラしながら、一緒に自分の感情が動くのがわかるのです。
それは、ゆらゆらと揺れる程度のものではなく、
鷲掴みにされて180度方向転換させられるような、そんな衝撃だったりもします。

山本氏は著作が非常に多いため、まだ全部は網羅できていませんが、
中でも一番好きなのは「柳橋物語」。
自分を心から愛してくれる人、自分が本当に愛する人は誰なのか...
主人公の女性の気持ちが、もう見事に自分に乗り移ったようになりました。
あとは「さぶ」。
幼い頃から奉公に出た2人の少年の友情を描いた作品で、これは中学生の推薦図書にもなっていますが、
大人こそ、この作品の大きさが理解できるのではないかと思います。

山本氏の作品は、黒澤明監督を始め多くの映画の原作にもなっていて、
前述の「赤髭診療譚」も、黒澤作品で映画化されています。


実は時代小説にも、ボサノバのコンピレーション・アルバムみたいに、
色々な作家の作品を集めた文庫も、あるんですよ。
でも音楽と同じで、やっぱりコンピではその作家の特徴がよくわからないので、
作家を知るきっかけにはなっても、作風を楽しむまではいきません...
ということで、コンピで気になった作家は、その後でその人の作品を読んでみますが、
あまりにつまらなくて1冊読めない時も...正直けっこうあります(^^;)。
ただ単に斬り合い、果たし合い、藩のもめ事、権力争いみたいなのは、苦手なんですよね...
みなさんがよくご存知の池波正太郎や京極夏彦などの他にも、
諸田玲子、宇江佐真理、山本一力、藤沢周平、北原亞以子、平岩弓枝...等々、
色々な人を読みましたが、やっぱり今のところ、山本周五郎がダントツお気に入りです。


そして、最近は捕物帳作品の掘り下げ方式で、
畠中恵の師匠、都築道夫「なめくじ長屋 捕り物騒ぎ」シリーズも読みました。
まさに「しゃばけ」の原点ここにあり!でしたが、ちょっと内容がグロテスクというか...
女性向きではないような部分も多いので、私は「しゃばけ」の方が好きですね。

畠中氏はもともとは漫画家で、都築氏の時代小説家養成講座に7年通って、後に作家デビューしています。
その小説家養成講座が池袋の大手カルチャーだったそうで、
もしかして今、私が仕事をしている池袋コミュニティ・カレッジなのでは...と思っていますが、
定かではありません(笑)。

その都築氏が「なめくじ長屋」シリーズを書く際に参考にしたというのが、岡本綺堂の「半七捕物帳」。
岡本綺堂は、日本で最初の江戸時代小説;捕物帳を書いたと言われる大御所で、
もとは新歌舞伎の劇作家です。
私はこれまでに全集の1巻「玉藻の前」だけを読んだことがありますが、
これがもう、古典か?と思うほどの読みにくさ(苦笑)。
でも、頑張って読みましたよ!
男を虜にする魔性の女=玉藻の前 の話は、
他の時代小説の中に例え話で出てくるほど、有名です。

そして今、その時代小説の原点「半七捕物帳」を図書館で予約取り寄せ中です。
ボサノバでいうなら、元祖ジョアン・ジルベルトみたいなものですね。
捕物帳を書く時代小説作家は、みんな1度は読んでいるであろう作品なので、
どんな話なのか、とても楽しみです(^^

では、その岡本氏が「半七捕物帳」を書く時に参考にしたのは何かというと...??
なんとそれはアーサー・コナン・ドイルの「シャーロック・ホームズ」なんだそうです!
まわりまわって、探偵推理小説の原点に行き当たりました(^^;

この後、私はイギリス文学へ向かうのでしょうか...はてさて、行方はいかに。



[photo data] Panasonic LUMIX DMC-FT3
ISO100 F10.0 1/400 0ev 4.9mm
浜辺のカヌー。
今回は乗らなかったけど、シュノーケルポイントまでこれで行くこともあります。
簡単そうに見えて、けっこう漕ぐのは大変です。

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コメント

あぁ、この『時代小説の世界へ、ようこそ』のブログを見なければ良かった!散歩がてらに近所の図書館まで一時間半ほどかけて歩いて行く。先日このブログで知った「宮部みゆき」のコーナーに行き時代物の『あやし』と『日暮らし(1)』の2冊を借りて来た。読む前は、いつもそうなのだが、高を括って二週間では読み切れないだろうなぁ~、欲張らずに一冊にしておけば良かったかな?
ところがどっこい、『あやし』は丑三つ時を過ぎて寅の刻(明け方の4時頃)まで一気に読み終え、次の日も『日暮らし』を一気読みしてしまった。二日続けての一気読みでへなへなに疲れてしまった。この数十年、こんなに夢中で読んだのは記憶に無い。年寄りには面白い時代小説は身体に障る、明日は、正確には今日は、箱根の温泉にでも行って身体を労わろう。
そして原発事故に比較的近い福島県の裏磐梯の温泉に10月の初旬二泊三日で行くが(風評被害を支援する意味で)「畠中恵」の『しゃばけ』でも借りて持って行こう。それまで、当分の間、時代小説は御法度だ!

面白い本は、寝食忘れてしまいますよね。
お気持ち、よーくわかります!
宮部さんの「初ものがたり」も良いですよ。
昨年の秋に書いた、こちらも併せてご参考になれば(^^
「江戸ひぐらし」
http://akikoyanagisawa.com/carioca/2010/10/post_180.html

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