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一流の誇り

20080706.jpg日比谷へ行く用事あり、じゃあ、せっかくだからペニンシュラホテルにでも行ってみようかと、地下のカフェで待ち合わせをすることになりました。
香港のペニンシュラには大きなショッピングモールが入っていて、買い物にだけ行ったことがあるのですが、東京のペニンシュラに行くのは初めてです。
東京は香港に比べると規模は小さいものの、きらびらやかな概観と、落ち着いた雰囲気はさすが!
外国人のお客さまがけっこう多いようです。


1階のロビーラウンジのカフェとは別に、地下にもチョコレート、ケーキ、パン、紅茶などのショップと一緒になったカジュアルなカフェがあります。
私の方が先に着いたので、待ち合わせである旨を告げると、入口が見える位置の席に案内されました。
メニューを持ってきたギャルソンが
「お待ち合わせの方がいらっしゃってからご注文なさいますか?
 それとも先にお召し上がりになりますか?」
と聞いてくれて、

 そうか、そんな案もアリなんだ。

と思ったものの、先に注文することに。
カプチーノを頼んで携帯を確認したりしていると、先程のギャルソンとは別の、もう少し上の立場のマネージャー?かと思われる男性が、

「よろしければ、こちらをどうぞ」
と、1冊の雑誌を持ってきてくれました。

 はぁ〜 雑誌まで貸してくれるんだ。。

と思って開くと、なんと全部英語!
世界のペニンシュラホテルの紹介雑誌で、まるでファッション誌の「ヴォーグ」みたいな作りです。
当然ながら内容は全くわかりませんが、雰囲気としては格好良いし、なんとなくセレブ気分というのはこういう事か〜などと思ってペラペラめくり、それなりに楽しませていただきました。


そうこうしているうちに、立派なオリジナルマグカップに入ったカプチーノが運ばれてきました。
小さな小さなオレンジパウンドケーキがついています。
もちろん、味は文句無し。
飲みながらしばらく待っていると、待ち合わせの相方が
「今、日比谷駅に着いた」とメールしてきました。
ホテルは地下鉄駅からも直結しているので、もうすぐ来るなぁと開閉式のガラス扉の向こうを眺めていると、彼がこっちへ向かっているのが見えました。
わかったかな?と思い、ちょっと手を挙げかけた所で、彼は私に気付かず、何故か店の前を通り過ぎ、違う方向へ歩いて行ってしまったのです!
あれれ、店の入口付近がチョコレート売り場だったから、その奥がカフェだとわからなかったかな〜と思っていると、なんと彼が通り過ぎた直後、カフェのギャルソンがガラス扉を開けて店を飛び出し、彼を追いかけて行ったのです!
呆然とそれを見ていると、しばらくしてギャルソンと彼が一緒に店に戻って来ました。


そうです。
ギャルソンは、待ち合わせ相手が私に気付かずに通り過ぎてしまったのを見て、呼びに行ってくれたのです。
私は相手がどんな人だとか一言もお店の人に話してはいませんし、お店の人に困った顔をしてみせた訳でもありません。
彼に手を振ろうと”テーブルからちょっと右手を挙げかけた”だけ...
それだけで、店を飛び出して連れてきてくれるなんて、あっぱれとしか言い様がありません。
きっと、テーブル毎に担当ギャルソンが決まっていて、お客さんのことをよーく見てるんでしょう。
それを実にさり気なく、当たり前のようにやってしまう所に、ホテルマンとしての格の高さを見た気がしました。


席に着いた彼に聞くと、
カフェは見えたけれど、光線の加減で私の姿はちょうど見えなかったので、もしかして同じフロアに他にもカフェらしき店があるのか確かめてこようと思ったとのこと。
店を通り過ぎて歩いていったら行き止まりになったので、戻ろうと振り返った所でギャルソンに声を掛けられたのだそうです。


噂には聞いてはいたけれど、接客サービスは本当に一流でした。
館内はどこもピカピカ、案内もスマート、従業員は誰もが話す声の大きさもスピードも歯切れもちょうどよく、謙譲語・丁寧語・尊敬語すべてが完璧。おつりのお札までもが手が切れそうな新札で、1杯1500円のカプチーノでもしょうがないかな...と思ってしまいました(^^;)。


先日、東急百貨店の本店に行った際にも、ちょっと驚いたことがありました。
多めの買い物をして、それらをラッピングしてもらわなければならなかったので、店員さんが
「お包みに少々お時間をいただきますので、
 もし他にお買い物がございましたら、そちらをお済ませになっている間にご用意しておくことでもできますが、
 どうなさいますか」
と聞いてくれました。
ちょうど化粧品を買いたかった私は、
「あ、じゃあ1階で化粧品を見たいので、それから受け取りに来ます」
と(そんなことまで言わなくても良かったんですが)、思い浮かんだままにそう答えたのです。
すると、
「では、1階のクロークにお荷物をお廻ししておきましょうか」
と言われたのです。

  は? クローク?

咄嗟のことに、すぐには理解できずに一瞬固まる私。
今、居るフロアは6階です。
1階で買い物をしているなら、ラッピングが終わったら1階のクロークまで店の者が持って行くので、帰りにわざわざ6階まで来なくても1階で受け取れますよ、ということのようです。


しかし、デパートでクロークなんて利用したことがありません。
だいたい、クロークなんて何処にあるの??
そんなサービスがあることすら、初めて知りました。
こんな時ばかり小心者の私は、なんとなく申し訳ないような気がして、
次の瞬間、
「いえいえ、6階まで受け取りに来ます!」
と答えていました(頼めばよかった...トホホ)。
 
ホテルもデパートも、色々なサービスがあるんですね。
めったにデパートで買い物なんてしないけど、やっぱり違うんだな〜と感心してしまいました。
それをうまく活用できるようになってこそ、上客ということでしょうか。


接客態度ももちろんですが、私は人の言葉遣いが気になる方なので、ホテルマンやデパートの店員さんの綺麗な日本語にはいつもウットリし、それだけで気分が良くなってしまいます。
普段、おかしな接客日本語にイラッとしたとしても、自分だって完璧ではないし、そうそう指摘する訳にもいきません。
でも、自分ではそれほどとは思っていなくても、たまにきちんとした言葉遣いを聞くとすがすがしい気分が全身を通り抜けていくので、実はけっこうストレスなのだとわかります。


例えば、スーパーやドラッグストアのレジなどでよく聞かれる
「これ、一緒に入れちゃって、だいじょーぶですかね?」
...この日本語には毎回、憂鬱にさせられます。
食べ物と掃除用品を一緒の袋に入れたら良くないだろうと気遣ってくれるのは有り難いし、熱意は認めるのですが、友達じゃないんですから!
「こちらもご一緒してよろしいでしょうか?」「同じ袋でもよろしいですか?」
と言うのが、接客業としては普通ではないでしょうか。


「駐車券は大丈夫ですか?」
というのも、ガックリくる一言です。
私の駐車券は、どこか体調でも悪いのでしょうか。
「駐車券のご利用はございますか?」
と言ってくれたら、気持ち良いのになぁ。。


飲食店で唐突に
「お飲物はお茶でよろしかったでしょうか」
というのも、過去形にすれば丁寧になると思っている誤解が横行している証拠です。
最近、これは聞き慣れてしまって来ましたが、本来なら
「お飲物はお茶でよろしいでしょうか」ですよね。
さっき「お茶で」と言われたような気がしたけど、水が良いって言われたっけ?どっちだったかな?確認してみよう...ということで、
「お飲物はお茶でよろしかったでしょうか」
と言うならわかりますが、こういう使い方は、もはやされていないようです。
「大丈夫ですか」と「〜でよろしかったでしょうか」の乱用は、もう誰にも止められないのでしょう。


他にもあります。
いつだったかファミレスで、家族で食事の後に話をしていると、コップのお水が少なくなったのを見て、注いでくれようとしたウェイトレスの女性が唐突に私のコップを掴み、
「お水を汲ませていただきますっ!」
そして全員の水をドーッと注いで行ったことがあり、一同唖然。
私たちは馬ですか...??
気持ちも一生懸命さもよくわかるけれど、こういう時は
「失礼致します」
と言って、そっと水を注いで行けば、それで良いのではないでしょうか。


でもこれは「若い人はなっとらん」「常識がない」という問題じゃないと思います。
おばさんでもおじさんでも、おかしな日本語の人はたくさんいますし、たぶん知らないだけなのです。
決して乱暴だとか無愛想だとかではなく、当の本人は一生懸命、親切丁寧にしているつもりなのですから、とてももったいない気がします。
ペニンシュラのギャルソンも東急本店の店員さんも若い人でしたので、ちゃんと教えさえすれば、誰でもきちんとした話し方も接客もできるのです。
要は教育なのだろうなと思います。
あとは、自分の仕事に誇りを持っているかどうか、でしょうね。


そして、私もいい大人なんだから、時には客として高くてもちゃんとした所に行って、接客のプロに対応してもらうというのも必要なんだなぁと思いました。
そういう場所に身を置くと、自分も「きちんとしなくちゃ」と襟を正して、イヤでも背筋が伸びますからね(笑)。

普段はカジュアルで気取らない気さくなお店がいいけれど、たまには自分への投資をしよう〜と思った出来事でした。

[photo data]
Olympus E-410 ZUIKO DIGITAL ED25mm F2.8
ISO400 F2.8 1/160 +1.3ev 25mm

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