プロならば
時々、こんな私でもプロのヘア&メイクさんに髪のセットと化粧をしてもらうことがあります。
すると、必ず言われることが3つ。
「髪が多い」「眉毛の形が悪い」「睫毛(まつげ)が上を向きにくい」!
髪が多いにもかかわらず、あまり梳(す)いていないのには、理由があります。
私はくせ毛なので、あまりに今風に梳き梳きにしてしまうと、広がってどうにもならなくなるからです。
「くせ毛は、ある程度は重さがあった方が落ち着く」というのは定説で、私の髪を切ってくれている美容師(私はパーマとカットで別々の2軒の美容院に行っているので、2人)たちは、その中のギリギリの線で、いつもなんとかしてくれているのでした。
でも、一応はブローで落ち着いている私の髪を、その日初めて見たヘア&メイクさんは、
「なんでこんな重いスタイルにしてるの?」
と、純粋に思うらしく、前述のようなコメントになるわけです。
いやいや、美容院でその場しのぎのスタイルにしてもらって、美容師自身は満足したとしても、それから後の毎日に格闘するのはこの私。
事情をいつも説明するのだけど、哀しいかな皆さん、いぶかし気なんだよなぁ。。
「眉毛の形が悪い」「睫毛(まつげ)が上を向きにくい」は、生まれもった形であるからに、仕方ありません。
眉毛は、「好きなようにカットしてください。難しいから適当にしてあるので...」
と言って、とりあえず納得してもらい、
睫毛は、「ホットビューラーと、ウォータープルーフマスカラで大丈夫ですので、それで。」
と言うと、あっさりその通りにしてくださってます。。
しかし。
これって、客が言うべきことでしょうか?? 私の方が相談したいくらいなのに...(^^;)
「いつもどうしてるんですか?」と私に聞くのも良いけれど、プロなら自分でなんとかするべきです。
「すいませんー、面倒で〜」と言いながらやってもらうのって、テンション下がります。
もちろんすべての方がそうではありませんが、こういう場合は、とてもガッカリしてしまうのです。
とはいえ、髪が多いのは、実はけっこう一般的に見ても重すぎるのかな〜、他人の意見も謙虚に聞くべきかしら?とも思い、先日、美容院で
「いつもそう言われるので、もっと軽くできますか?」
と聞いてみました。すると私の担当の美容師は、
「えー、そうですか? そんなことないと思いますよ。
たぶん、ヘア&メイクさんはスタイリングしかしないから、やりずらいってことでしょう。
それをやるのがプロなんだから、まとめにくくても頑張ってもらわなくちゃね。」
と言ったのです。
激しく同感!
私が今の担当の美容師を尊敬してずっとお願いしているのは、たとえどんなにやりずらくても、手に負えないような髪でも、決して「ダメ」とか「無理」とかの否定的な言葉を口にしないことです。
それまで、私はたいていの美容師に
「髪が多い」「髪が細い」「扱いずらい」「くせが強い」から、〜しずらいと、言い訳ばっかりされてきました。
でも、お客が肩身の狭い思いをするなんて、どこか変ですよね。
以前、何かの雑誌の美容エッセイで、
「パリの美容院はお客を決してけなさない。誉めて誉めて誉めまくって帰す」というのを読んだことがあって、私は、これって大きな違いだなぁと思ったことがあります。
綺麗になりたくて来ている美容院で、けなす(とまでは行かなくても、自分ではどうにもならない外見上の不具合を指摘して、そのせいでうまくいかないと言う)のは、いかがなものでしょうか。
指摘して、より良くなるためのアドバイスをしてくれるのならばまだしも(そういうケースもあるけど、トンチンカンだったり、そんなのやってるよ!というようなあまりにベタすぎるものだったりして、適切なのは少ない)、
「だから、上手くできない」という言い訳にされて、おしまいです。
そりゃまぁ、問題ないに越したことはないけど、そんな人は少ないでしょうし、問題があるからこそやり甲斐があって、それを何とかできるからプロなんですよ、ね。
こういう時、私はいつも自分の仕事に置き換えて考えてしまいます。
音楽でも、同じなんです。
私は現在、ボサノバの歌とギターを教えていますが、レッスンに来ている生徒さんたちに、
「声質が悪い」「背が低い、太っている、痩せているから無理」「あなたは頑固だからダメ」
などと私がいつも言っていたら、生徒はあっと言う間にゼロになっちゃいますよ!
例えば、
「姿勢が悪い」、「口の使い方が違っている」「呼吸がうまくいっていない」のようなもともとの体質以外の要素はいくらでもどうにでもできるので良いですが、生まれ持っての体質と、そうは簡単にかわらない性格についての場合は、NGです。
(それでも、「〜が悪い」「〜がダメ」という言い方はせずに、「今は〜になっているから、次は〜してみましょう」という風に言うようにしています。この方が否定されたようには感じないですよね)
実際、前の歌の先生を辞めた理由を話してくれた私の生徒さんたちによると、「声質が悪いと言われた」「あなたの声はこういう曲に向いていないと言われた」というのがトップなんです。 たぶん、その先生だって悪気はなかったのでしょうし、間違ったニュアンスで伝わってしまったのかもしれませんが...
でも、生徒さんたちは少しでも上手くなりたいから習いに来ていて、そして、先生はそれをなんとかする”仕事”として受けているのですから、結果的にマイナスに受け取られてしまうのは、残念なことです。
じゃぁ、お世辞を言い続けるの〜??というと、そうではなくて、物は言いよう、言葉は表現力の数だけ存在します。
私の美容師も、私の髪が多くて扱いにくいことは、重々わかっています。
それでいて、私が気紛れで時々「髪を短くしたい、前髪を作りたい!」などと言うと、
「短いと、くせ毛だから広がってまとまらなくなりますよ、前髪も広がってしまうから
こういう髪タイプの人はね〜、あるとかえって重くなりますよ」
とは言わず、
「柳沢さんは、髪が長い方が雰囲気に合っていて素敵。前髪も、作らない方が良いと思います」
と言うのです。
後者の方が、「そうか、そうか」と気持ちよく納得しませんか?(たとえ、それが違っていたとしても笑)
その道のプロとは、どんな状況においても最善を尽くして、お客さんを満足させることができる人!
他人に対しても、自分対しても、いつも良い面を見ることができる人になろうと、肝に命じる私なのでした。
コメント
お久しぶりです。
どの分野でも意識の高い優秀な人と、自分のレベルの低さを棚に上げて文句ばかり言う‘やぶ’がいますよね。
今日のお話を拝読して、感心させられること、反省すること、学ぶべき姿勢がありました。
プロであることの意識と姿勢にも強く共感しました。
最近はライブにお伺いできていませんが、次回お伺いして時にはもしお時間があればそういうお話をできたら面白いです。
投稿者: たちき | 2006年05月07日 21:37
>たちきさま
こんばんは お久しぶりです。
私が書くのも、おこがましい話なんですけどね(^^;)
ただ、私も気付かないうちに傷つけるような事を言ってレッスンしているかもしれないので、
せめて気付ける時には!と思っています。
でも、まぁ難しいですよね。
「ビシバシとやってくれないと物足りない」「欠点を指摘できなければプロじゃない」
という人もいるだろうし、
全員が同じ説明で満足する訳ではないので。
要は、コミュニケーション能力でしょうか... 私も目下、勉強の日々。
生徒さんたちには、本当に教えられることばかりです。
ライブは、またご都合のよろしい時にぜひ!
以前にお話に出た国分寺のクラスタにも、8/12(土)に出演します。
投稿者: 柳沢 | 2006年05月08日 00:25
プロ意識の欠如なんでしょうね。
お客さんを相手とする基本を忘れている人やお店は、
いつかは廃れてしまいます。
「激しく同感!」された美容師さんを大切にして下さい。(^^♪
投稿者: クリントン渡部 | 2006年05月08日 17:58
今の美容師さんに辞められちゃうと、私ホント困ります〜!
それにしても、
「私もあんな風になりたいな」と思わせる素敵な方々が自分のまわりにいるというのは、
それだけでも幸せなことですね。
(実際、この美容師さんの他にも、たくさんいらっしゃいます!)
感謝して、見習います(^^)。
投稿者: 柳沢 | 2006年05月08日 19:27