口笛を吹きたい
生まれてこのかた、私は口笛がまったく吹けませんでした。
ちょっとピーとなるとか、そういうレベルですらなく、シューと息が出るだけの、筋金入りの出来無さです。
口笛なんて、子供の頃に遊びで吹いて覚えたという人は多いと思いますが、うちは両親共々が口笛を吹けず、また他にも教えてくれる人もおらず、自己流でも全然音が出ず...そのまま大人になりました。
でも、私は口笛の音が好きなのです。
ボサノバにも、イントロや間奏でジョアンやジョビンが、さり気なく口笛を入れています。
こういうのやりたいんだよなぁ〜と常日頃思っていて、10年くらい前からずっと、吹けるという人に会った時には、
「どうやったら音が鳴るんですか?」
と聞いてはみるのですが、
「どうやってって...? うーん、意識してないからなぁ」
「いやいや、人前で吹くほどじゃないし!」
などと言われてしまうことがほとんどで、解決には至りませんでした。
そして11月のある日、ふと思ったのです。
吹き方を習いに行って、練習したら、自分でも吹けるのではないか?
そうと決まったら、善は急げです。
実は以前から心に留めていた口笛吹きの方がいて、
どこかで教室をやっているというテレビ番組の特集を観たことがあったのです。
その時は、
口笛って、習えるんだ〜
と漠然と思っただけで、自分が行こうとは思わなかったのですが...やっぱり潜在意識はあったのかもしれません。
そしてその4日後、私はレッスンに向かっていました。
先生は、分山貴美子さん。
"International Whistlers Convention 2007"(国際口笛大会)のグランドチャンピオンです。
超初心者の私は、ビギナーズクラス(グループレッスン:90分)に参加します。
その日の参加者は、私を含め4名でした。
他の方々は、ある程度音が出せて、簡単な童謡などが演奏できる
「口笛?吹けるよ。あ、でも人前で吹くのはちょっと...」という一般的なレベル。
特に1人の男性は
「もうあなたはレギュラークラスに行ってもいいのでは?」という腕前でした。
私だけが、
「まったくできません。シュー」という状態です。
最初に、口の形、舌の位置などの基本的なことを教えてもらいますが、
それですぐに音が出るほど口笛は甘くナイ!
「そのまま練習しててください」
と言われ、
「あ、でも他の方に迷惑じゃないですか」と答えたら、
「迷惑になったら言いますから、大丈夫です」とのこと。
後で気が付いたのですが、音が出ないので、他の人のレッスンの迷惑にはならないんですよね(笑)。
結局、私はレッスンのほとんどの時間を、鏡で口元を見ながら、
ひたすら教室の隅に向かって音出しの練習をすることに費やしました。
すると、1時間ぐらいで少し音が出るようになってきました。
どうやら、ただ吹くとA(ラ)の音が出るようです。
でも、今度は音程変化がつけられません。何をどうやっても全部 ラ。
そこでまた先生に聞いて練習していると、時々B(シ)が出るように!
でも、ラ〜シ〜とか、シ〜ラ〜は出来ません。ラ か シ しか、鳴りません。
しかも、なんらかの偶然が重なって上手くいった時にしか音は出ません。
悶絶苦闘中の私の脇で、3人は「カエルのうた」の輪唱などをしています。
あぁ...自分だけまったくできないという、しばし忘れて居たこの感覚。
その昔、ポルトガル語の授業で苦労した時のことをにわかに思い出しました。
でも、しょうがないですね。できないからレッスンに来たんだし、
そんなに簡単にできるくらいなら、習いに来なくても出来るんだし!
ということで、
「音が出ないまま帰る人もいますから、音が出ただけで今日はOKです」
という先生に、さらにあれこれ質問してアドバイスをもらい、その日のレッスンは終わったのでした。
ここのレッスンは単発予約制なので、自分の都合の良い時に予約して行くシステムです。
でも、習い事は最初の3カ月が勝負なので、
その間は定期的、集中的にレッスン&練習した方が早いというのが私の持論。
2週間後のレッスンまでに、なんとか出せる音を増やしたい一心で、自主練習に入りました。
ひたすら毎日練習、練習です。
口笛は音が響くので、下手だと耳にキンキンしてけっこうツライということもわかりました。
口笛を吹いている夢を見て、口から出た音で目が覚めたこともありました(笑)。
そんなこんなの1週間で、E〜B(ミ〜シ)がなんとか出るように!
でも、面白いことに、起点はどうしてもA(ラ)なのです。
ラ〜ソ〜ファ〜ミ〜か、ラ〜シ〜しかできない。逆はダメです。
繋ぎが上手くいかないので、曲になりません。
さらに1週間で、なんとかEb〜C(ミb〜ド)まで広がり、
音域の狭い曲ならなんとかヨロヨロと吹けるようになってきました。
でも、Ebの下はどんなに頑張っても出ない。Cの上も同様です。
先生は、歌の音域と同じ3オクターブを口笛で出せることができるのですよ、信じられせん〜!
いったいどうやってこの上下を出しているのだろう...
私の歌の音域は2オクターブなので、口笛で3オクターブも出なくてもいいのですが(というか、そんな簡単なことではないので)、せめて2オクターブは出ないと何の曲も吹けないんですよね。。
これを突破するにはどうしたらいいのか??
次のレッスンでぜひ聞いてみようと思いながら、練習を重ねたのでした。
そして2回目のレッスンがやって来ました。
今度の参加者は6名。前回一緒だった人は2人だけで、後は初めての方ばかりです。
そのうちの新規生1人は、音がまったく出ないという方でした。
先生が基本的な口の形を説明した後、
先生「そのまま練習しててください」
生徒「あ、でも他の方に迷惑じゃないですか」
先生「迷惑になったら言いますから、大丈夫です」
あれれ??これ、デジャヴュ? まるで2週間前の私です!
練習すれば音が出るようになりますよ〜と言ってあげたかったなぁ(笑
2回目のレッスンで、Ebの下とCの上が出ない原因はわかりました。
舌のフォームが悪かったようで、また練習し直しです。
でもまだたかだか2週間、傷は浅いですよ。
しかし、ここからまた苦悶の日々が続き、
その1週間後、調子が良い時に、やっとこさC〜Cの1オクターブ出ることがある!くらいになりました。
でも、これではまだ吹ける曲は、ちょっとアレンジした「ミッキーマウスマーチ」など、本当に僅かです。
他には「ジングルベル」の前半が吹けるのですが、クリスマスが終わってもこの曲だと、厳しいですね(^^;
3回目のレッスンまでに「コントロール可能なC〜Cの1オクターブ」の音が出せるようになりたい!
音が出る →メロディになる →練習で演奏できる →人前で演奏できる
の順であることはわかるので、まずは「安定した音がいつでも出せること」が第1目標です。
「口笛なんて、習うものじゃない」という方もいらっしゃるかと思いますが、
こういう「あえて人には習わなくても何とかなるもの」というのは、
本当は習った方が良いのではないかなとも思うのです。
口笛は生きて行くのにあまり必要じゃないかもしれないけど、
例えば、料理、メイク、話し方、歩き方など...自己流でそれなりにできることも、
ちゃんと勉強してもっと上手に出来たら、その方がいいですよね?
口笛は「自分が楽器」なところは、歌に似ています。
舌を使うか、声帯を使うかの違いです。
...と考えると、ある程度のレベルまで持ってくるのは、かなり時間がかかるかと思われます。
それでも、出来ない事が出来るようになるプロセスが、楽しいのです。結果は、そのご褒美ですね。
子供の頃から、何をどうやっても絶対に出来なかった口笛が吹けるようになるなんて、
私にとっては、今まで見えなかった世界が新たに見えるようになった感じすら、するのですよ。
まだまだ道のりは遠くとも、
きっといつか、ギターと歌と口笛の「吹き語り」を叶えたいと
日々ピーピーと練習を続ける私なのでした。
[photo data]
Olympus E-410 ZUIKO DIGITAL ED25mm F2.8
ISO400 F4.0 1/20 0ev 25mm
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チェコ製の玩具で、ゆ〜らゆ〜らと優雅に揺れます。