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旅をする木

2012-02-06-1.jpg最近読んだ本で一番心に残っているのは、
ある物語作家さんにすすめられて読んだエッセイ集「旅をする木/星野道夫著」です。
一概に「本好きな人」と言っても、好みが色々とあるので、本好き人にすすめられた本がすごく良かった!というのも、なかなか難しいものですが、さすがはプロだけあって、私の好みをバッチリ押さえてくれたのでした。


星野道夫氏について先入観ゼロで読み始めると、
エッセイというよりは、アラスカに住んでいる古い友達からの手紙のような、
肌に水が馴染むようスーッと心に入ってくるような、優しくわかり易い文体。

そのほとんどはアラスカの自然の丁寧な描写であって、
あたかも絵の説明をしているかのような繊細緻密な文章が続きます。
自分が景色を見ている時、こんなに詳細まで見ているだろうか?と首を傾げたくなるほどです。
そこで初めて、彼が作家ではなく、
アラスカの自然や動物を始めとした大自然を追いかけて旅をしている写真家であることに、
やっと気がつきました。

でも、本には写真は1枚も掲っていないのです。
(彼の他の作品には、写真も掲載されているものもあります)
この理由の本当のところはわかりませんが、この本では、
写真ナシで読者に純粋にアラスカを思い描いて欲しかったのかな...と思います。

読み進めるうち、実は最初、ちょっと物足りないような感じもしました。
見開き2ページに改行がほとんどなく、
漢字多めの文章がぎっしり!というような本が好きな私としては
もう少しガッツリしててもいいかな?という気もしたのです(^^;
でもなぜか、なぜか読み止められない。。
そして、1話読み終わる度、何とも言えない穏やか〜な気分になるのです。

これは何? この柔らかな余韻は何?
そして、寝る前のひとときにこの本を読むと、
とても良く眠れることに気づきました。

以来、この本は何とはなしに読み返す、大切な1冊になっています。


寒いところが苦手な私は、アラスカに行ってみたいなんて
今まで一度も思ったことがありません。
どうしてあんなに寒い所に人が住んでいるのか?とすら思っていました。
かねてから1度オーロラは見てみたいなとは思っていましたが、
マイナス35度なんて未知の世界に挑戦する勇気もなく、
あとは強いていうなら、寒い場所には虫がいないのでいいな...くらいの認識でした。

しかし、この心満たされるような温かな文章に触れる時、
アラスカに魅せられた筆者の一途で真摯な想いを知って、
アラスカにほぼ無関心だった私が、静かな感動を覚えました。

でも、彼の作品は単にアラスカ紹介の本ではないんですよ。
アラスカに行きたい、行きたくないというような単純な事ではなく、
喉元まで出かかっているけど言葉にできない、人間としての大切な気持ちを代弁してくれる...
そんな本だと感じました。

寒い夜のひととき、心が殺伐とするとき、理由もなく元気が出ないとき...
もちろん今現在に何の不自由も感じない幸せな時でさえ、
数多ある自己啓発本のような薄っぺらな言葉の羅列でなく、
厳しい自然の中、身を持ってその偉大さを経験したからこそ!書ける言霊の数々に
きっと心洗われることと思います。


「旅をする木/星野道夫著」文集文庫
星野さんは1996年、アラスカで撮影中に白熊に襲われて亡くなってしまいましたが、
彼の残してくれた多くの写真と文章は、その後もずっと私たちに語りかけ続けてくれています。


[photo data]
Olympus E-410 ZUIKO DIGITAL14-54mm F2.8-3.5
(ISO400 F3.5 1/60 +0.7ev 25mm)
パン屋さんのクロワッサン。
ミニチュア大好きな私としては、こういう写真はなぜかミニチュアに見えてしまう(^^;
宅配寿司のパンフも然り。

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