ジョアン・ジルベルト ライブ後半
11/8(水)、3日目は30分遅れでのスタート。あちこちから「今日は早いね〜」の声が漏れます(苦笑)。
この日からの2日間はDVD撮影のため、ビデオカメラが5台程セッティングされておりました。
数日間のお休みを経て、ジョアンもコンディションが整った様子。
声もギターも、なかなか良い感じで進んで行きます。
この日の私は、ライブ観覧の中に別のお目当てがありました。
前半2日間のライブで、ジョアンがCD未録音の曲を何曲か演ったのですが、
その中でとても気に入った2曲のタイトルがどうしても知りたくて...
今日もしやってくれたら、その前後の曲を覚えていて、明日で会場に貼り出される演目リストで探そう!という魂胆です。
意気込んで聴いていたら、「Isto aqui o que e'」の後と「白と黒のポートレート」の後に演ってくれました!
その曲とは、演目リストを探すに「Treze de Ouro」「Voce nao sabe amar」という曲でした。
特に「Voce nao sabe amar」は、「♪O nosso amor parou aqui, E foi melhor assim〜」という歌い出しで始まる、
恋人との別れを正当化しようと苦悩する心を歌った曲で、メロディラインとジョアンのギター・ボイシングが最高なんです!
DVDにも入ってくれるといいなぁ〜
そして、2日目に大好評だった「Pica -Pau」も、再登場し、完成度がさらに増していました。
圧巻は「Agua de Marco」で、この日の演奏は歴史的と言っても過言ではないかもしれません。
アンコールは1回でしたが、アンコールだけで1時間くらい演奏していましたので、けっこう長くステージに出てくれていたと思います。
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11/9(水)、さぁどうなることやら?の最終日がやってきました。
ジョアンも気が抜けたのか、またまた1時間の遅刻。
現れてすぐに歌うものの、ちょっとまだ声の調子が出ていない模様。
そしてこの日は前代未聞?!のハプニング日になったのでした。。
まずは5曲目、「Pra que discutir com madame ?」のエンディングで、
ジョアンが信じられないくらいギターのコード進行を間違えました。
今までは、ポジションが飛んだ時にフレットを1つ間違えるとか、その位だったのが、その時は、違う所に行ったまま戻れない...
途中で持ち直すかな?と思いきや、やっぱり駄目で、歌はそのままに、勢いで終わってしまったのです。
私たち観客は、それでもいつも通りに拍手をしたのですが、ジョアンは納得していなかったようで、
そのまますぐに、さっき間違えた所から弾き直して歌い出すではありませんか!
これには場内も爆笑、再び割れんばかりの拍手が沸き起こりました。
そしてその後、しばらくは問題もなく安定してきたかな?と思っていると、
今度は「Samab da Minha Terra」で、高い音を歌う声が掠れて出なくなってしまったのです。
ジョアンが、声が出ないなんて... あり得ないことです。
よっぽど疲れが出てしまったのでは...となんだか心配になりながら観ていると、
とりあえずは歌い終わり、次の曲を選ぶジョアン。
なんと、次に歌い出したのは「Vou te contar(Wave)」だったのです。。
なんで、よりにもよってこんな高低の激しい歌を?!
「Vou te contar(Wave)」は、初来日の時のリハで、彼がたった1つ歌った曲で、
この曲は音域が広いので、1曲でPAの調整が取れるという理由だったとか、聞いた記憶があります。
案の定、ちょっと苦しそうです。。
そしてその後に選んだのが「O pato」。これもそんなに楽な歌ではありません。
大丈夫かな〜と思って聞いていると、ノリは良くて、持ち直した感じです。
ところがノリ過ぎたのか、ラストの「♪Quen quen quen quen〜」の部分で、眼鏡がズリ落ちて来てしまい、
「♪Quen quen quen quen〜 Desculpe(ごめんなさい)!」
と言って、ラスト数小節を残したまま、演奏を終えたのです。
これには、本人も場内も大爆笑で、会場全体が一気にものすごーく温かい雰囲気になりました。
その後、ジョアンは「さぁ、今度は眼鏡をきちんとかけて」というようなお茶目なゼスチャーをして、
「Corcovado」を歌ったのですが、途中で先程の事件を思い出したのか、含み笑いをしながら歌う場面もあり、
また意外な一面を観た気がしたのでした。
「Corcovado」は微笑みながら歌うような曲ではないので、あれは確実に思い出し笑いをしていたものと思われます。
眼鏡と言えば、私が初めてジョアンのライブを観たサンパウロでも、同じことがありました。
その時は、眼鏡がずり落ちたのではなく、膝の上か床の上かに見事に落っこちてしまい、1曲歌い終わってから拾ってかけたらしいのですが、
1階3列目で観ていたにもかかわらず、なんと私はそのことを翌日の新聞記事で知ったのです。
眼鏡が落ちた...??? そうだったっけ??
お粗末なことに、初めてジョアンを観た私は放心状態で、そのことをまったく覚えていなかったのでした。
一体、何を聴いて観ていたんでしょう(苦笑) でも、そのくらいの大きな衝撃&感動だったのですよ。
今回、色々な方の話を聞くに、ジョアンはかなり「鼻眼鏡」で、しかもうつむき加減で弾いて歌うので、
眼鏡ずり落ちは、決して珍しくない現象のようです。
最終日のアンコールは2回。
2回目のラストに歌った「Garota de Ipanema」で、また眼鏡がずり落ちそうになったジョアンは、
歌いながらギターの手を止めて眼鏡を直し、またそのまま弾きはじめました。
でも、この時の1コーラス目に、やはりまたギターでコ−ド間違いをしたので、イパネマでコードを誤るなんて
かなり集中力が途切れて来ているのだろうと、お疲れ度合いを察する場面が再びありました。
しかし、結局最後は観客全員総立ち&拍手喝采でジョアンを見送り、今回のライブはすべて幕となりました。
全体的に振り返ると、クォリティは3日目が良かったように思いますが、
初日は「Duas Contas」「A primeira vez」に、制作途中の自作曲など、珍しい演奏曲があったし、
2日目は「Sem voce」の素晴らしい演奏があり、「Pica-pau」の初披露で場内は騒然となったり、
最終日はジョアンの人柄に触れられる、未だかつてないハプニング・デーだったりと、
今回も盛り沢山な内容でした。
初日はいつもの「何度も繰り返す」ことをあまりせず、1曲×2コーラスくらいでどんどん曲を重ねていましたが、
2日目にはお得意の5〜6コーラス演奏になっていて、やっぱりDVD収録に備えて調整していたのかも?しれません。
私のジョアンのライブ観覧も、気が付けば計14回。
もう観られないのでは...と思っていた頃が嘘のようです。
日本では、日本のボサノバファンのためにお馴染みの曲を演奏してくれることが多いけれど、
サンパウロで聴いた時は、半分以上が知らない曲でした。
もしもう1度奇跡があるのなら、もうファン・サービスはいらないから、ジョアンの好きな曲を好きなだけ
弾いてくれたら、それが一番嬉しいのになぁ。。
知らなかった名曲を、ジョアンの演奏で知るなんて、本当に素敵な事ですよね。
ジョアンの弾くボサノバが、私のたったひとつの目標ですあり、希望であり、理想です。
ボサノバ誕生の時代を駆け抜けて来たこの音色と歌声を、
時を経て今、自分の耳で聴くことができる幸せを、ひしひしと噛みしめた4日間でした。
ちなみに、「Pica-pau」とは、キツツキのこと。
かわいいモレーナに恋をしてドキドキする僕の心は、キツツキみたいだよ〜と歌っています。