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2007年09月02日

This is Bossa Nova

ThisIsBossaNova.jpgボサノバのドキュメンタリー映画『This is Bossa Nova』を、やっと観てきました。
結論から言うと、想像以上に素晴らしかったです。
こんなにきちんとボサノバの神髄を表現した映像が、今まであったでしょうか??
もう絶版になってしまったルイ・カストロ著「ボサノバの歴史」を、忠実に映像にしてくれた...という感じです。
どこを取っても納得の行く出来で、ボサノバがさらに好きになりました。


ボサノバ・コンサートが始めて開かれた場所、ナラの自宅のボサノバ・サロン、メネスカルとカルロス・リラがギター教室を開いていた場所... 
こういうところだったんだ!と、今まで色々な書籍で知っていた文字の情報が、映像として始めて確認できました。
さまざまなアーティスト達のポートレートも、映画の中でたくさん出てきて、
「あぁ、これはこういう時の写真だったんだな」
と、その時の時代背景を一緒に確認することができるのは、嬉しいことでした。


そして、現在も活躍するブラジル人アーティストたちの演奏、数々の名演奏のシーン、キーマンのインタビュー等々、盛り沢山の内容で、あっという間の2時間です。
そして、何より映画館のスクリーンいっぱいに広がるリオの美しい風景!
懐かしさで胸がいっぱいになりました。

「リオの美しさが、ボサノバを作った...」
映画でもそんな言葉が出てきましたが、本当にその通りだと思います。
あの海と、太陽と、山々と、太陽の匂い、風と光がなければ、ボサノバは生まれなかったでしょう。

音楽的な見地からの分析も、興味深かったです。
ジョアンについては、いつもの通り本人からの証言が取れないので、廻りの人間からの「あぶり出し」で描かれていましたが(笑)、ジョアンのボサノバと、メネスカルとリラのボサノバの関係が、この映画ではきちんと説明されています。
また、ジョビンがクラリネットのジャズ・ミュージシャンと「Samba de uma nota so'(ワンノートサンバ)」を演奏するシーンで、ラストの部分のリズムが合わなくて、教えるという場面があるのですが、実はここ、私が生徒にこの曲を教えている時も、いつも生徒がリズムを取れない場所と同じだったのです。
シンコペーションの場所を誤るとラストが伴奏とメロ(ここではピアノとクラリネット。ギターと歌の場合も同じ)が合わなくなるのですが、リズムの取り方がジャズやポップスと、ボサノバ(ブラジル音楽)は違う、という典型的な例だと思いました。


全体的に大変満足な内容でしたが、正直言って、ちょっとマニア向けかも?とも思います。
あまりにも次々とたくさんの関係者の名前が出てくること、全編に渡り9割がポルトガル語で、馴染みがなければまったく聞き取れないし、予測も理解もできないこと、見慣れていないとブラジル人のアーティストの顔の区別もおそらくつかないであろうこと...などから言って、「ボサノバって何だろう?」という人が、1度見て「わかった!」と思えるような入門者向け映画ではないということです。でも、その”しっかりした専門的な作り”が良いのですけどね。

その証拠に(というと大袈裟ですが...)、先に観に行った方々に感想を聞いていた時に、
「全部はわからなかったから、もう1度観たい」
という人が多かったこと、そして
「ジョアンは出ていなかった」「アストラッドは出ていなかった」
「シナトラとジョアンが共演しているシーンがあった」
などと、実際とは違うことを記憶している人がけっこう居たこと、
(ジョアンもアストラッドの映像もありましたし、シナトラと共演していたのはジョビンです)
映画館でも、後半には夢の中...の人々がわりと居たこと...などが挙げられます(笑)。

映画館の受付に、ボサノバ関連の書籍も売っていましたので、この機会にぜひ。
本を読んでから観ると、尚一層、良さがわかると思います。

しかし、何はともあれ、ボサノバ・ファンにはぜひ観て欲しい映画です。
あれこれとボサノバについて私がここに書く必要はもうありません!
そしてDVD化を強く望みます。

◆『This is Bossa Nova』
渋谷Q-AXシネマにて9/7まで4回/日上映中。
9/8〜は上映回数変更 または 上映終了の可能性あり。
http://www.q-ax.com/

2007年07月07日

Dindi

ジョビンのサンバ・カンサゥンに、「Dindi」という曲があります。
これは、シルビア・テーリスに捧げて創ったと言われていて、
彼らは不倫関係にあったとか、なかったとか、色々な噂もあったりします。
まぁ、それはさておき、私の大好きな曲の1つです。

さて今回、この曲を全部、ちゃんとした日本語訳にしようとしたら、どうも納得のいかない箇所が...
どこかの訳が間違っているのかなぁと思い、ポルトガル語の先生に尋ねてみると、
意外にも、間違っていたのは「合っている」と疑わなかったフレーズ
”Voce nao existe”だったことがわかりました。

これは、直訳すると「あなたは存在しない」となるので、
私は「君はもういない」と訳していたのですが、
先生は、ブラジルでは「違う意味で使う」というのです。
彼女が説明してくれた例は、こんなものでした。


...例えば、小学生の子供がいる夫婦がいて、共働きをしたいのだけど、
子供を預ける場所が見つからない。
すると隣の人が、
「お母さんの会社が終わるまで、うちで面倒を見てあげるから、
 学校が終わったらうちへおいで」と言ってくれる。
でも、毎日では申し訳ないので、時々頼もうかと思ったら、
「そんなこと気にしなくていいから、毎日でも来て構わないから、どうぞどうぞ」
と言ってくれる。そういう時、その人のことを
「Voce nao existe!」と言う、と。

ふ〜ん、なるほど、なるほど。
これって、日本語でも同じ様な表現をしますよね。
「そんな人、いないよ!」


「あんな良い人はいない」とか、「そんな人はいない」とか、
日本語では、”人”を形容する言葉が入ってしまうけれど、
ポルトガル語ではそれが「Voce=あなた」だけで表わされているのでした。
国は違っても、言葉の表現の仕方はとても似ているのだなぁと、ちょっと感動してしまいました。
基本的には「なんて良い人なの!」「信じられない!」という究極の褒め言葉ですが、ネガティブな意味でも使うことがあるそうです。それも、日本語と同じですね。


たぶん、日常生活の中でこのフレーズを聞いたとしたら、前後の成りゆきで、そのニュアンスがわかったでしょう。
でも恋歌の場合、「あなたはもういない」という解釈が入ることも、過去の思い出にすがる歌も決して珍しくないため、てっきりその手の歌かと早合点してしまいました。

ということで、ここは
「君のような人は他にいないんだ」
という意味だったのです。そうすれば、全体の内容がクリアになります。


私は今回、この部分を「かけがえのない人」と訳しました。


ちなみに、「Dinidi」には、英語の歌詞もあります。
Ray Gilbertoが、原詩とほとんどが一致するような見事な英語作詞をしていて、ジョビンも、アルバム『Terra Brasilis』では英語で歌っています。
ジョビンは生前、英語歌詞をアメリカ人に任せきりにしてしまうと、原詩の内容を無視したブラジルのイメージ...海岸、海、女性、椰子の木、サンバ、コパカバーナ...などのイメージ歌詞にされてしまうこを、とても嫌がっていたようです。
そのため、英語歌詞をつける際には、原詩の内容を損なわないようにということを最優先に、念入りなチェックをしていたとかで、この曲もその努力の賜物といえるでしょう。

英語では「Voce nao existe」の部分は違う表現をしていますが、それもとても素敵です。
下記に、ポルトガル語歌詞と日本語訳、英語歌詞と日本語訳を載せましたので、比べてみてください(^^)。


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【Dindi】

muica: Antonio Carlos Jobim
Letra: Aloysio de Oliveira

Ceu, tao grande e' o ceu
E bando de nuvens que passam ligeiras
Pra onde elas vao
Ah, eu nao sei, nao sei

E o vento que fala nas folhas
Contando as historias que sao de ninguem
Mas que sao minhas
E de voce tambem

Ai, Dindi
Se soubesses o bem que eu te quero
O mundo seria dindi, tudo, Dindi, lindo, Dindi
Ah, Dindi
Se um dia voce for embora me leva contigo, Dindi
Fica, Dindi, olha, Dindi

E as aguas deste rio onde vao
eu nao sei
A minha vida inteira, esperei, esperei
Por voce, Dindi
Que e' a coisa mais linda que existe,
Voce nao existe, dindi,
Olha, Dindi, Adivinha, Dindi,
Deixa, Dindi, que eu te adore, Dindi...


【ジンジ】
作曲:アントニオ・カルロス・ジョビン
作詞:アロイージオ・ヂ・オリベイラ
訳:柳沢暁子

空よ、遥かな空よ
足早に流れる雲の群れ
どこへ行くのか 私は知らない

とりとめのない話を 葉に囁く風
それは 僕達の恋物語

あぁ ジンジ もし君が
僕の気持ちをわかってくれたなら
もう何もいらない
あぁ ジンジ もしいつの日か
君が行ってしまうなら
僕も一緒に連れていって
ねぇ、ジンジ ここに居て

この川の水がどこへ流れていくのか
僕は知らない
僕の人生のすべてを捧げて
君を待っていた

ジンジ、君はこの世で一番美しい
かけがえのない人
気づいて、ジンジ
君を愛させておくれ

====================================
【Dindi】

music: Antonio Carlos Jobim
English words by Ray Gilberto

Sky, so vast is the sky
With faraway clouds just wandering by
Where do they go
Oh, I don't know, don't know

Wind that speaks to the leaves
Telling stories that no one believes
Stories of love
belog to you and me

Oh, Dindi
If I only had words I would say
All the beautiful things that I see
When you've with me
Oh my Dindi

Oh, Dindi
Like the song of the wind in the trees
That's how my heart is singing, Dindi
Happy, Dindi
When you've with me

I love you more each day
Yes I do, Yes I do
I'd let you go away
If you'd take me with you

Don't you know, Dindi
I'll be running and searching for you
Like a river that can't find the sea
That would be me
Without you, Dindi


【ジンジ】
作曲:アントニオ・カルロス・ジョビン
英語作詞:レイ・ジルベルト
訳:柳沢暁子

空よ、遥かな空よ
あてもなく彷徨う 遠くの雲の群れ
どこへ行くのか 私は知らない

とりとめのない話を 葉に囁く風
それは 僕達の恋物語

あぁ ジンジ 
もし君が僕と一緒にいてくれるなら
見るもの全てが美しく
もう何も言うことはない

あぁ ジンジ 
木立を抜ける風の歌のように
僕の心も歌うんだ
君が一緒にいてくれるなら
僕は幸せだよ、ジンジ

君を愛している 昨日よりも、一昨日よりも
そうなんだ そうなんだ
もし 君が僕を一緒に連れていってくれるなら
君を何処へでも 行かせられるだろう

わかるかい、ジンジ
僕は 君を探して流れる
海に辿りつけない川のよう
それが 君のいない僕なんだ
ジンジ

2006年10月07日

ボサノバ・セッション

espeto20061002.jpg先日、大塚の『Espeto Brasil』で毎月第1月曜日の夜に行われているボサノバ・セッションに参加してきました。

これ、私が歌うためではなく、私がレッスンをしている生徒さんたちに、セッション体験をしてもらうためです。
有志の皆さんとお店で待ち合わせをして、私が到着した最初の頃には、
全員かなり緊張した面持ちで、口数も少なくなったりしていたのですが...
実際にステージに立つと、実に堂々とした歌いっぷりで、皆さん歌いこなしているではありませんか!
その幸せそうな笑顔を見ていると、私まで本当に嬉しくなってしまいました。

ナビゲーターのケンタカハシ氏のギター、フルートの大野氏、そしてパーカッションのクラウジオ氏には
大いに盛り上げていただき、
ドラマ−やギタリストとして参加していらっしゃる方々と一緒に演奏したり、
他の方の歌を聴かせていただいたり、楽しいひとときでした。
写真は、最後に全員で歌った「Tristeza」の1コマ。
一番左の私が、実は一番満喫していたりして...

レッスンの時も、発表会の時も、いつもは私がギターを弾いているので
第3者的に生徒さんの歌を聴いたのは、実は今回が初めてです。
「セッションに参加する」なんて、言葉で書くととっても簡単ですが、
初めて一緒にステージに立つ人と、全然知らないお客さんの前で、リハーサルもなくポルトガル語の歌を歌うなんて、
本当はものすごく大変なことなのですよ。

生徒さんの歌を聴いていて、突然、私は自分が最初にセッションに参加した時のことを思い出しました。
ポルトガル語も勉強していなかった頃の、もうずいぶん昔のことですが、
気合いだけで覚えた「イパネマの娘」を歌おうとマイクを握ったものの、
出だしはおろか、まったく1人で歌うことができなかったのです。
結局、その時にいらした別のボーカリストに英語で歌ってもらい、
その上から一緒にポルトガル語で歌うという方法でなんとか凌いだのでした。
その時のバックメンバーは全部ジャズ畑の方だったので、今思えばノリがだいぶ違ったのだと思いますが、
「バンドで歌うこと」なんて死ぬ程やっていた私が、まさか音も取れないなんて思いもしなかったので、
かなりショックでした。
当然、笑顔もなく、必死の形相で歌っていたと思われます(笑)。

...それに比べたら、生徒さんたちは皆さん余裕です。
「みんな上手だね〜」「堂々としてたね!」等々、演奏者の方からお誉めの言葉をいただいて、
自分の事よりも嬉しかったのでした。

普段レッスンでいくら歌っていても、それだけではなかなか飛躍できません。
1年に1度発表会はやっているけれど、やっぱり私としては、せっかくレッスンに通ってくださっているのだから、
どんどん色々な所に出て行って、歌ってみて欲しいのです。
ライブ経験は、私のようにたとえ失敗したとしても、とても有意義です。
少しずつ実践を積んでレパートリーを増やして、ボサノバをもっともっと好きになってもらえたら、
私も講師冥利に尽きるというものです(^^)。


ブラジルから帰ってきてから始めたボサノバ・ボーカルを教える仕事も、
あれよあれよという間にギターまで教えることになって、気が付いたら3年半経っていました。
最近はすっかりボサノバもメジャーな音楽に仲間入りし、
「弾き語りをしたい」という方がとても増えてきたこともあり、
自由が丘で行っているグループレッスンは、今期を最後に終了することにしました。
(来年4月からは、個人レッスンのみの対応となります)
グループレッスンは、歌う喜びを見つけてもらうこと、同じ志を持つ仲間ができること、
私ってこんなこともできるんだ!と、新しい自分に気付いてもらうこと... 色々な面も持っています。
ラスト半年、できる限りたくさんのことを吸収してもらえるように、私も色々と案を練っていますので、
また一緒に頑張って行けたらなぁと思います!

2006年07月10日

ジョアン3度目の来日決定!

11月に、ジョアン・ジルベルトが3度目の来日公演を行います。
今回は、DVD収録の予定もあるとかないとか?!
またあの歌声とギターに酔える日が来るなんて、夢のようです〜!!


【ジョアン・ジルベルト公式サイト】
http://www2.uol.com.br/joaogilberto/

【J-WAVE: 7/9放送情報より】
 THE BOSSA NOVA - ジョアン・ジルベルト 〜最後の奇跡〜 
   ●11月4日(土)●5日(日) 17:00開演予定 
   ●11月8日(水)●9日(木) 19:00開演予定 
 会場:東京国際フォーラム・ホールA 
 前売開始:9月2日(土)〜
 特別先行予約:J-WAVEで予定。詳細後日。

2006年04月16日

本物を聴く

先日、愛子さまの入園式の様子をテレビで観ていたら、学習院幼稚園では、入園の時間に毎日アンティークのオルゴールを鳴らしているのだそうです。これは、小さい時から本物の良い音を聴くことが大切だという教育理念からだとか。うーん、すごい!

子供なんか、何聴いてもわからないだろうと思う人もいるかもしれないけど、いやいや、子供だからこそ大切なのです。
このアンティークのオルゴール、外国のオークションなどで高値で取り引きされているような、立派なものでした。
多くの大人ですら、今まで本物のオルゴールの音色なんて聴いたことないかも(^^;) 羨ましい〜

本物を〜!は、他のことにもすべて当てはまります。
古物商の有名な方は、「偽者は見る必要はない。本物だけを見ていれば、その区別は自然につくようになる」と言っていたし、
私のギターの師匠たちも、「ボサノバはジョアン・ジルベルト、クラシックはセゴビアだけを聴いていれば良い。他は聴かなくたって何も問題はない」と言い切っていました。
味覚も、あまりにもいつも人工的な物ばかり食べていると、舌の機能が衰えて、微妙な味の違いがわからなくなってしまいます。

生楽器の音は、意外に普段は聴いていないことが多いのです。
実は、最近の音楽に使われている楽器は、ほとんどが打込み(ソフト音源)によるもので、予算の都合上など色々もあって、生楽器を入れているのなんて、とても少ないのが現状です。それでも、この頃の音源はサンプリングものだったら音色の質は格段に良くはなっているから、ちょっとやそっとじゃ聞き分けられませんから、曲者なのですが。

でも、やっぱり本物の音は違う。
この私も、生楽器のミュージシャンとライブをやるようになって、本物の音をずっと聴くようになってから、耳が変わった経験があります。
ふと何かの時に、その昔使っていた打込み用のあまり質の良いとは言えない音源を聴いて、「何だこりゃ!!」とびっくりしたのです。
人工音を聴き続けていた時には気が付かなかったことが、急にわかるようになって、以来、ソフト音源を使う時には注意しています。
(もちろん、人工音でしか出ない音というのもあって、そいうう音楽はまた別モノです)

自分の出す音色は、何でも誰でもなかなかすぐに本物にはならないけど、お手本には最高の物を...というのは、とても理にかなっていると思うのでした。