量より質です
都心某所の和食専門処、元有名料亭の料理人だったという店主の料理が、時間制限なし1050円で食べ放題の店に行きました。
実はココ、先日テレビのとある番組で紹介されていて、刺身にすき焼きに、カニに松茸ご飯...と、かなりの品揃。店構えも良さそうだし、美味しそうだな〜と思って観ていたら、なんと偶然にも翌日行く予定の場所の近くではありませんか。普段は量より質重視、もともとあまり量は食べないのでバイキングには興味がない私も、どうせお昼を食べるし、たまにはこういうのも良いかも!...と思い、珍しく立ち寄ってみたのでした。
ネットで検索して詳細を確認するに、オフィス街なので11:30〜13:00はとても混むとのこと。お店は14:00入店までOKなので、13:30くらいに行けば入れるかな?と思いきや...店の前に到達する前に、すでに長蛇の列が! ...これではとても14:00までには入れそうにありません。並んでいるお客さんはというと、年輩の婦人のグループや若い学生風のカップルなど、到底、勤め人には見えないような人ばかりで、テレビ効果を実感です。あえなくその日はリタイヤしました。
とはいえ、行けないと余計に行ってみたくなるのが人情です。翌週、あきらめきれずに今度は少し早めの12時5分前に到着してみました。
すでに人は並んでいましたが、数えると15名ほど。店内の広さはわからないけど、11:30に入ったお客さんがそろそろ出てくるだろうと思い、列に加わります。あれよあれよと言う間に私の後にも人が続きますが、相変わらず客層はおばさん、おじさん、カップル... スーツ姿のサラリーマンやOLはほとんど見当たりません。私の後ろに並んでいたカップルは、お店おHPを印刷した紙を握りしめ、並ぶとすぐ私に、
「あのー、すいません。並ぶ時に名前とか書くんですかね?」
と聞いてきました。私もよくはわからなかったけれど、誰もそんなことはしてなさそうだったので、
「いえ、別にそういうシステムじゃないみたいですよ?」
と答えました。「私もよくわからないんですけど」。
待つこと20分、やっと案内され店内へ。
入るやいなや両脇に料理が並んでいるのはテレビで観ていた通りだったので驚きませんでしたが、すぐに
「お会計を先にいただいていますので」
と言われ、それに少々びっくり。1050円を支払います。
「こちらへどうぞ〜」というお店の奥から声に従って進むと、ウナギの寝床のような店内は、4人掛けのテーブルが6つほどあって、その奥が座敷になっていました。
テ−ブル席の間の狭い通路を抜けて私が案内されたのは4人掛テーブルの1席で、まぁ、混んでいるだろうから相席は覚悟の上だったのですが、なんと、あとの3人は、揃いも揃ってハリーポッターに出て来るハグリットみたいな大男!
ハグリットをご存知ない方には、山男、雪男、巨人とでも思っていただければ問題ありません。
お、お友達ですか??
と思いきや、それぞれ個人的な方々のようで、山盛りの皿を文字どおりガツガツと食べています。
ちょっと着席に躊躇はするものの、ここに座るしかないのだから仕方ありません。
荷物を置いて、料理を取りに入り口付近へ戻り、皿をもらうと、
「松茸ご飯、タコご飯、白米のどれがよろしいですか?」
と、ご飯はよそってくれる様子。松茸ご飯をお願いし、その後は奥から順番にお好きなものをどうぞ、と。
...しかし、いざ取ろうと思うと、取りたいものがナイ。
テレビで観た豪華お刺身の盛り合わせは、もうすでに8割近くがなくなっていて、残っているのを早く取ってってください、と言わんばかり。しかも店内の熱気と暖房で心なしか色艶も褪せ、
「これ、大丈夫かしら...」と、しばし考えてしまう私。
でも、最近私の胃腸は元気だし、せっかく来たんだし...となんとか理由をつけてサーモンとカツオの叩き(にんにく多めに)を思い切って取り、ほうれんそうの胡麻和えを取り、ウナギ、トマト、きゅうり...
ここで、そう言えばスキ焼きがあったなぁということを思い出し、スキ焼きの前へ。しかし鍋に箸を入れると、大量の白菜がひっかかるのみ...
えー、テレビではたっくさん肉が入ってたのに!!
と思い、肉を探そうと箸をグルグルしてみるけれど、薄い肉がかろうじてひっかかる...という具合です。あまり鍋をかき回している分けにもいかないので、あきらめて少し自分の皿に取ると、その横におでんがありました。大好きな大根が沢山あったので、その大根を1ついただいて、とりあえず席に戻る事にしました。
相変わらず、私の席では大男3兄弟が一心不乱に食事を進めておりました。
私が箸を割っていると、あさりの味噌汁が運ばれてきて、どうもお茶はテーブルの上の魔法瓶からセルフサービスのようです。お茶を注いで、松茸ご飯から食べ始めますが、うーん、味も別にどうってことない、普通です。どの料理も、もちろん不味くはないけど、特別すばらしくもない。
自分で作った方が美味しいかな... 特におでんは。
そんなことを考えながら食事をしていると、
ムチャ、クチャ、ムチャ、クチャ、ムチャ、クチャ...
ズズズー、 んグー、 ゴックン。
ゴクゴクゴク、クチャムチャ、クチャムチャ、クチャムチャ...
こんな音が耳にひっきりなしに聞こえてきます。
そう、これは大男3兄弟のモグモグ音。
ちょっと!! いい加減にして!!
な、なんでこんな食事マナーのないムサ男たちと一緒のテーブルで食べなくちゃいけないの?!
あらためて周りを見渡すと、サラリーマンらしき人は全体の1割、女性は全体の3割弱でしょうか。驚いたのは、圧倒的に多いのは、この「ラフな格好の1人者の大食漢」なのです。
彼らが私のテ−ブルに偶然そろいもそろって集まってしまったというのも否めませんが、あれ、なんかこの光景観たことがあるなぁ... そして私の脳裏に浮かんだのは、以前にテレビで観た高層マンションの建設工事現場のまかない食堂の風景でした。みんなガタイも良いし、良く食べる。命掛けで仕事をしているので、栄養補給は何よりも大事ですから。
...て、ここは都心のオフィス街なんですけど。
どうみてもサラリーマンには見えない、とちらかと言うとアキバ系の皆さん、お仕事は一体何を??
そして彼らの咀嚼音と共に常にしているのが、お店の人の片付け音。
バタン、ガタン、ドタン、
混んでいるから忙しいのでしょうけど、食器を片付ける音、何かを置く音が途切れることがありません。
そして、案内の声もひっきりなしです。
はい、何名様でーす、後ろ通りまーす(狭いので、声をかけないと危なくて通れない)、
お荷物こちらでーす、コートは掛けておきますので、お食事先にどうぞー、
あ、お二人のお客さま、向かい合わせではなく並びで座ってくださーい...
決して感じは悪くないのだけど、とにかく、せわしないのです。
うーっ なんて落ち着かない店なんだ!!
そして、落ち着かない原因はもう1つありました。
ここの店では、おかわりが自由なので、食べ終わった客は何も言わずに席を立って、新しい皿を入口でもらい、料理を取ってまた戻ってくるのですが、問題は本当に食事を終えて帰ったのか、おかわりを取りに行っているのかの区別がつかない、ということです。
「ごちそうさまー」などと何か言って帰る客は別ですが、そのまま帰ってしまう人も多く、会計も店に入る時に済ませてしまっているので、とてもわかりにくいのです。
そのへんは、店員がちゃんと観て区別しているのかと思ったら、どうもそうではないらしく、ちょっと席を立った時間が長いとすぐに片付けに寄ってきて、その前に座っているお客に
「こちらのお客さまは、お済みでしょうかね?」
と聞くという方法でなんとか凌いでいるようでした。
私の前の山男がいなくなった時も、新参者の私にはもちろんどちらの理由なのかわかりませんでした。それに私はなるべく早く食べて店を出たかったし、あまりに食べ方がひどい彼らをなるべく見ないようにもしていたし、店員に山男の行方を聞かれても、最初は何のことなのかもわからず、返事ができませんでした。
すると、私の横に座っていた雪男が、
「何も言わないで行ちゃったから...」と突然言ったのす。
店員はその答に返事もせず、そそくさと食器と箸を下げ始めました。
...すると、しばらくして、また雪男が口を開きました。
「あれ、...居るなぁ」
どうも帰ったと思われた山男は、おかわりを取りに行っていたようで、雪男はその様子を食べながらも発見したのでした。彼のつぶやきに気がついた店員は、私の前の席に案内してしまった年輩の紳士(この人は普通のスーツ姿のおじさんだった;この人が前の方が良かった 涙)を別の席にそそくさと案内すると、山盛りの料理と共に戻ってきた山男に、
「お箸を落としてしまったので、新しいものをお使いくださーい」と何くわぬ顔で言いました。
その後も、今度は隣のテーブルで店員が別の客に
「こちらのお客さまは、お済みでしょうかね?」
と聞いたのですが、何故か答えたのは私のとなりの雪男。
「そこは、小柄の女性で、帰ったみたいですー」
何、この人?! 常連?
これはちょっとヤバイかも(←何が?)。早く、早く食べて出なくちゃ!
私は一刻も早くこのお店を出たいと真剣に思いました。
ある意味、こんなに一生懸命に食べたことは、久しぶり。。 いや、今までなかったかも...
店員は雪男には目もくれず(返事くらいすれば良いのに、目線も合わそうとしていませんでした)、また食器を下げ始めました。
今度は本当にその人は帰っていたらしく、別の男性がその席に案内されてきました。
お客はひっきりなしです。次から次へと、泉のごとく沸いては入ってきます。
しかし、何かが違う。どうしてこんなに居心地が悪いんだろう?店内は古いけど、別に不潔という訳ではありません。料理も、まずくはありません。これだけ食べられて都心で1050円なら、安くて良いのは本当かもしれません。
でも、いくらランチ食べ放題とはいえ、お店の命=雰囲気が無視されすぎています。
ふと目線を落とせば、テーブルや柱は傷だらけ、畳は黄ばみ、BGMもなく、ただ物音と咀嚼音が響く店内...
お腹だけいっぱいになっても心が満たされないというのは、こういう事なのか!と、私はこの店で「食事とは食べられれば良いというものではない」と改めて思い知らされました。
誰と食べるか、どこで食べるか、どんな器で、どんな盛り付けで、どんな順序で...美味しさには、その全てが関係しているのです。
ここのお店で食べるくらいなら、私は大好きな人とコンビニの100円焼そばパンを、寒空の公園のベンチで食べた方が何百倍も美味しい!と思うでしょう。
目的が違った所に迷いこんだ私が悪かったとはいえ、私はこのお店にはもう2度と行かないでしょうし、人にもススメないでしょう。こんなことなら、アフタヌーンティのパスタランチのが良かった!! 若いOLさんがいない店は、やっぱり女性には不向きだからなのですね。
そして、テレビの情報がいかにあてにならないかも、よくよくわかった1日でした。トホホ...
コメント
Akikoさん大変でしたね。
>私は大好きな人とコンビニの100円焼そばパンを、
>寒空の公園のベンチで食べた方が何百倍も美味しい!
その表現とてもほのぼのしました。
美味しさの基準は「量より質」です。
投稿者: クリントン | 2007年02月01日 20:50
このお店、禁煙だったのか煙草臭くなかったのが、唯一救いです!
投稿者: 柳沢 | 2007年02月02日 21:47